食卓の「リアル」(会津の教え一)

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30日の夜から1日にかけて、福島県の会津に行ってきた。ここには、あるプロジェクトの一次の調査という位置づけで行ってきた。このプロジェクトに関しては追々書こうと思う。

今回、会津で経験できたことは、特に今の自分にとって、非常に意味のある知見と考え方をもたらした。その中で、今回得たものを要素に分けて、記しておく。


近年高い食の安全性が求められている。その中で、現在人気沸騰中の「有機野菜」を育てている農家のIさん宅に泊めさせてもらい、その生産過程の一部を見させていただいた。

会 津は非常に肥沃な土地らしい。会津という土地は盆地のため、昔大雨が降った時には、山から高い栄養分を含む粘土が流れてきて、ここに堆積したのだそうだ。 このため会津は豊作と凶作にほとんど差がないことで知られており、1993年の冷夏の時も、会津を残した福島全域は大きな被害を受けたのに対し、会津では 逆に豊作であったそうだ。さらに、会津は災害の少ない地域で、南方にある日本アルプスのおかげで、台風が来ない。そのため水害も少なく、農業を営むには最 適の土地だと言う。(この辺りは良く分からないので、調べて追記しておこう。)


今回僕らが行ったのは、トマトの収穫と、じゃがいもの選別だった。

Iさんは、農薬を一切使わない有機農法で 野菜を作っている。Iさんは、「有機農法と化学肥料を使った農法とどう違うのか。その違いは一点だけ。『野菜に苦労をさせるか否か。』だけ。」と言う。化 学肥料は人工的に作られた肥料だが、この肥料の長所でもあり短所でもあるところは、野菜に栄養素を送ってあげることなんだとか。そのため、野菜は根をそこ まで張らずとも栄養をたっぷり吸い取ることができきる。この野菜はある程度大きく育つは育つが、味もある程度までしか育たない。「それに「加えて」、健康 に良くないとかそういう話なんだよね。」とIさんは言っていた。しかし、有機農法で用いる肥料では、野菜にとって必要な栄養素が簡単には吸収できない。野 菜は受け身では栄養を吸収できないため、根を張って吸収できる面を広げながら、自ら栄養素を吸収していかなくてはならない。それには自然の成り行きだけで は難しく、途中でダウンして死んでしまう野菜もあるので管理をしっかりしなければならないが、その末大きくなった野菜の味は、化学肥料のものとは比べ物にならないそうだ。

「こっちの方がウマい。だから僕はこっちのやり方で野菜を育てる。化学肥料を使うと健康に良くないとかなんとか言われてるけど、この味を知ってしまったら、まず化学肥料は使えないんだよね。」

I さんの野菜は、どれも新鮮な、かつ食欲のそそる匂いをガンガン放っている。その匂いに誘われてくる虫は後を絶たない。その虫とうまく付き合っていきなが ら、必要な分を収穫し、出荷したり地元の人たちに持って行ったりする。地元の人はお返しにと、Iさんに収穫物やらもらったものやら、少し多めに買ったもの など、様々なものを持ってくる。その話をしているIさんは非常に楽しそうだった。


ここまではいい話。Iさんの野菜は本当に美味しい。本当に。みな、食べたくなるだろう。では、そのプロセスはどうか。

Iさんに連れられてトマトを育てているビニールハウスに行った。Iさんは様々な野菜を、必要な分だけ育てているので、ビニールハウス自体はそこまで大きくなかった。しかし、そこの暑さと○○の多さが半端じゃない。

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ト マトが広がる。顔を赤らめこっちを見てるやつから、青白い顔して興味なさそうにしたを向いているやつがいる。Iさんは完熟したトマトを出荷しているので、 うっすら顔を赤らめているやつではダメ。日焼けして顔を真っ赤にしているやつでもダメ。大恥かいて、顔から火が出そうなやつ。こいつを収穫する。

こ の収穫を困難にするもの。暑さ。なんせ暑い!!!直射日光がガンガン降り注ぎ、ビニールがその光を吸収し、だけど逃がさない。地球温暖化の恐怖を感じなが らの収穫(ウソ)。僕らは3人で収穫をしていたからいいものの、これがIさんとIさんの奥さんだけなら大変だ。収穫時期を見逃すと、「ゴチになります」と 言わんばかりに虫が寄ってくる。彼らに先を越されてからでは遅い。


さらに収穫を困難に、というか、いやにするもの。

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そ うです。蜘蛛です。彼らが本当に、心を折ろうとしてくる。写真には3匹しか写ってないけど、あり得ないくらいいた。何年も放置されているのか、ビニール シートの屋根の下に、蜘蛛の巣でできた屋根がある。そこには無数の蜘蛛と、間違えて遊びに来てしまって帰れなくなってしまった虫が住み着いている。

また、当たり前だけど苗と苗の間にも巣を作る。いい色をしたトマトがあるので手を伸ばすと、蜘蛛の巣にぶち当たる。そこいら一帯の蜘蛛が一斉に動き出し、巣 にかかった(壊した?)獲物の方に向かってくる。「うわっ!」となって手を振りはらって立ち上がると、今度は頭で巣を破る。メガネに巣がついたり、髪の毛 に蜘蛛が住んだり。

別に蜘蛛はきらいではないんですが、好きじゃないです。こんなことで地元の人に「都会っ子」と笑われたくはなかったので、我慢です。もっとも、だんだん慣れてくると、そこまで気にならなくなる。でも、顔とかで蜘蛛の巣に突っ込むと、マジで萎えた。

さらにさらに、少し悲しくなったことですが、下記の写真を見てください。これ、片方は売りに出せない商品。どっちが売りに出せない商品でしょうか。両方とも完熟。

CIMG3671.JPG正解は、左ですね。左が売りに出せない商品。理由は、ケツのところ。

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ちょ こっとです。ちょこっとヒビが入ってしまったので、売り物にはならなくなったのだそうです。「これ売れないんだ~~」と思うと、悲しくなりますよ。あの暑い中、蜘蛛と闘いながら一生懸命もいで、でもこんなんで売れないんですから。テレビで食糧危機を騒いでいるのを思い出すと、馬鹿じゃないかと思ってしまう。食べていいと言われたので、食ってやりました。僕トマト大好きなんですが、マジで美味しかった。ガツガツ食って、ヘタはそこらにポイする。完熟なのに 意外と皮が堅くて噛み心地があり、かつフルーツのごとく甘い。最高でした。なんて種類だろう?聞かなかったな。


トマトの収穫を終えると、次はじゃがいもの選別。これまでに収穫したじゃがいもから、状態のいいもの、少し削れたりネズミに食われたりしているけど、他の部分は食べられるもの、腐っているものに分ける。この作業が、地味だけど大変。

CIMG3683.JPGのサムネール画像じゃがいもも普通の農家では、農薬を使って腐らない対策をしているそうだ。腐るのは菌が原因なので、その菌を殺す薬をまけば、多少傷ついても腐りはしない。しかし、有機農法だとそんなことはしない。傷んだものは、ガンガン腐る。

さらに迷惑なことに、この腐ったもの(僕らは「お腐りさん」と呼んでいた。以下、お腐りさん。)は、隣の健康なじゃがいもも腐らせる。これにより、一つの ケースに一つでもお腐りさんが入っていると、全部とは言わないまでも、ケース中のじゃがいもが腐っていく。また、匂いも強烈。そんなじゃがいもを出荷するわけにはいかないので、お腐りさんと、そのお腐り液をもらったじゃがいもは分けなければならない。

これが、お腐りさんら。

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すげー臭いし、お腐りさんは持つとぶよぶよする。もうこれに触れると萎えちゃう。菌の部分を触る手は、普通に仕分けてる手とは変えて使う必要があるため、できるだけ観察し、お腐りさんを見つけたら反対の手で持ち、捨てる。お腐り液をかかってしまったじゃがいもも天日で殺菌するので、別口にする。他、傷がついていたり、ネズミに食われてないかなどをチェックし、仕分ける。しゃがんだり立ったり、重いじゃがいもケースを運んだりと大変だった。一日やっただけなので、別に疲れも何もないが、農家の方はこういった作業を毎日繰り返す。農薬を使えばこの仕分けはもっと楽になるのに。


この経験を通して思ったこと。

「スーパーにトマトは生えない。美味い野菜の労力に感謝。」

っ てこと。僕らの食卓に当たり前に置かれるトマトとじゃがいもは、本当にプロセスがあるんですよ。僕がやったことなんてほんの一部で、ビニールシートの管理から、苗を植えるところから、きれいに洗って箱詰めするところから、誰かに渡されて運ばれてくるところから、僕らがスーパーで買って食卓に届くわけです。このプロセスを体感することが、人に感謝できるようになる上で、とても大事なことのように感じる。100円200円で買えるトマトに、このプロセスがあるんです。じゃがいもや、他の野菜だって全く一緒。魚だって肉だってお菓子だって。気づかされたなー。

また、農薬使ったものは反対だとか、科学肥料はどうだとかってのは、リアルを知らない人から言われるセリフのような気がする。「健康に気を使って、農薬を使用したものは買わない」だとかってのを良く聞くようになった近年であるが、てか僕もそういうのヤダけど、仕事として農業をやられるのであれば、農薬使っちゃいますよー。面倒だもの!!例えば 今まで農薬を使った農法をしていた人が、使わない農法に変えるとならば、そこには設備投資やら学習やらと非常に大きなコストがかかる。また、上手くいくかどうかも不透明だし、大量生産だってできない。しかも若い人ならともかく、年配の人なら怖いでしょう。そしたら変えないですよね。

Iさんは好きでやってるし、何より自分や自分の子供、自分の地域のためにやっている。それなら楽しくやれるかもしれんが、これを「食の安全のために仕事して、やれ。」とは言えないでしょう!「農薬使ってるところからは、買いません。」とか言いだされても、仕事はいきなりは変えられない。この労力は「金払ってるんだから」とかじゃ変えられないですよ。てか、そもそもどれだけ農家の人にお金を払えているんだろう?(今回はトマトだったので、しかも僕トマト好きなので、 トマトの無農薬の取引が、農薬の取引と比べてどれくらいで行われているのか、調べてみようかな。)


それにしても、いい体験でした。「いい体験」で済ませてしまうのは、Iさんに申し訳ないし、自分にとってももったいない。自分ができることは何か。Iさんから野菜買ったりかな?皆に伝えることもそうか?何かしていかないと。



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プロフィール
  • name/林 賢司
  • birth/1986/04/18
  • belong/KO大学4年
  • theme/自分のために、他人を幸せにする
  • "My Accept"/自分の経験から目を背けずに、「その時の自分なりに」受け止めていくこと。
  • purpose/「その時の自分なり」の解釈・観察・感情の蓄積。
  • contact/kenji[at]monoraltype.com

このブログ記事について

このページは、kenjiが2008年8月 2日 12:06に書いたブログ記事です。

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